公認会計士の勉強は、1回目は専門学校のオンライン授業で取り組んだものの合格できず、2回目は実際の受講に切り替えました。そうすると同じく公認会計士を目指す専門学校の仲間が広がり、勉強方法などを教えてもらうことも増え、2回目に合格することができました。
公認会計士の勉強は理系とは別物のように思われるかもしれませんが、科目の中には理系の知識が活きるものも少なくありません。経済や管理会計、統計、簿記などはロジカルな考え方が基本になっていて、理系の知識や考え方が大いに活きるはずです。


Q工学部のご出身ですが、いつ、どのようなきっかけで公認会計士を目指そうと考えたのですか?
入学したのは化学系の学科で、新素材の開発などが面白そうだと思ってこの学科を選びました。大学で学び始めると、先輩の話などから次第に研究室の具体的なイメージが見えてくるもので、2年生の終わり頃に直面したのが、大学院に進んで研究を続けるか、学部卒で就職するかという悩みでした。
ただ私は、当時から経営や起業にも興味があって、他にも何か道があるのではないかと思い、いろいろ調べる中で知ったのが公認会計士でした。監査法人で監査の仕事に就けば、経営や会社の仕組みを理解できるだろうし、自分の未来をもっと広げるために公認会計士の資格を取ろうと決めました。
Q理系学部の2年の終わりで、公認会計士の役割や意義がすぐ理解できましたか?
最初は公認会計士の具体的な仕事内容や役割は知りませんでした。というのも、私が通っていた熊本大学には経済や経営系の学部がなく、また周りに公認会計士がいなかったからです。公認会計士に興味を持ってから資格に関する本を読む中で、公認会計士が企業の利益の金額などをチェックする重要な役割を果たしていることを理解していきました。公認会計士試験の勉強については専門学校のパンフレットや合格体験記が参考になりました。
Q大学での研究と資格取得の勉強を並行して行うのはかなり大変だったと思うのですが。
理系の3年、4年は研究も詰まってくるので、正直かなり頑張りました。大学の研究は、自分にできるところは極力頑張りつつ、研究室の仲間の助けも相当借りています。

Q大学卒業後は大手の監査法人に入りました。そこで感じた理系出身のメリットなどあれば教えてください。
同期の理系出身者は私一人で、配属されたIPO関連の部署にも、理系の先輩はほとんどいませんでした。IPOに限らず監査の対象企業には、理系の学生が就職する製造業の会社も多く、若手でも興味があって手を上げれば「理系の知識が役立つだろう」とアサインされやすかったし、実際に事業内容などの理解が早かったのは理系出身のメリットだと感じました。社長さんの話や、工場を見て回った実感から、ビジネス面での重要なポイントやネックになりそうな点が比較的早くつかめるのです。
先方が理系出身の場合も多く、同じバックボーンを持つ人間として話が弾み、より深いヒアリングができるのもメリットの1つではないかと思います。
Q監査をする上でも、理系出身者ならではの考え方が求められていると思うのですが。

財務諸表の様々な数字を「つながり」で考えるのは理系出身者に多い特性で、監査の正確性に寄与すると思います。この製品を作るためにはこれが必要ではないか、事業環境に変化があれば、ここに影響が出るのではないかと感じ、確認したり調べたりする。そもそもサイエンスは「なぜそうなっているのか」という疑問からスタートして解明に努力するもので、大学時代の研究活動で培ったそういう気質が監査に活きる場面は多いと思います。
Q社会に出て、あらためて感じた理系出身のメリットは?
「選択肢が広くなる」ことだと思います。大学進学の際に親にもよく言われていたことで、「理系で学んでおけば、途中で気持ちが変わっても文系職に移ることができる」というのは本当だと思います。公認会計士という文系就職をした自分を振り返っても、大学時代に化学の研究ができたことは人生の宝になっています。

Q今、理系の学部で学んでいる方たちに、公認会計士という進路を選んだ先輩としてメッセージをお願いします。
個人のキャリアの話をすると、資格取得のための勉強は確かに大変ですが、取ってしまえば後の選択肢はすごく広がると感じています。私は監査法人で働いた後に起業しましたが、もし事業に失敗しても会計士の資格があれば仕事には困らないという安心感が1つの支えになりました。

理系出身だからこそ、企業の発展に寄与できることがあり、理系だからこそ、会計・監査の世界で活躍できる場面が様々にあるのは確かです。
<聞き手:渡水 達史 JICPA広報委員/大手監査法人アソシエートパートナー/公認会計士/工学部卒>