『グローバル化の中の公認会計士~国際舞台での活躍~』IASB倉持亘一郎会員を迎えて

2017年03月28日

  平成29年3月3日に、国際会計基準審議会(IASB)客員研究員を務める倉持亘一郎会員を迎え、国際的な組織での業務の魅力や、国際的に活躍するために必要な素養や経験をどのように蓄積されたか等を伺うため、国際委員会のインタビューを実施しました。

 

  経済・企業活動のグローバル化や国際的な人の移動の活発化、そしてこれらのグローバル化の流れを受けた国際財務報告基準(IFRS)や国際監査基準(ISA)等、公認会計士の業務をめぐる基準の国際化が進展する中で、その業務及び果たすべき役割はますます拡大しています。資本市場の健全な発展を担う社会的インフラとしてその資格や職務の重要性が高まるなかで、日本の公認会計士にも、より広い視野を持って、幅広い分野で活躍し、世界の会計プロフェッションを牽引していくようなリーダーシップを発揮していくことが求められています。

 

  日本公認会計士協会でも、公認会計士の国際競争力の強化及びグローバルな人材育成のための体制整備を事業の重要事項として掲げ、今後グローバルな舞台で活躍できる公認会計士を長期的な視野を持って育成していくために何をするべきかについて検討を進めており、この施策の一環として、国際的な分野で将来的に活躍できる公認会計士の育成及び拡充を図るための足掛かりの一助となることを企図して、国内外を問わず国際的な舞台で活躍する会計プロフェッションをお招きし、現在の活躍に至るまでの経緯や現在の活動等についてインタビューを実施しております。

 

  倉持会員をお迎えしたインタビューでは、プロフェッションに入られた後国際分野に進むことを目指して具体的にどのような目標を立て、どのように英語によるコミュニケーション能力の向上に努められてきたか、目の前の業務における貢献と、将来より質の高い貢献ができる人材になるための能力向上をバランスさせて活躍の場を広げられてきたこと、そして、会計のプロフェッションである公認会計士として公益に資する分野で貢献していきたいという志を垣間見ることができました。

 

  IASBへの出向にあたっては、IFRSのエキスパートであるネイティブスピーカーばかりの組織の中で、「日本人と比べて英語ができる・IFRSを知っているというだけでは現地スタッフと比べて人並みの貢献すらできないのではないか」との危機感から、平日はIASBの客員研究員としてプロジェクトにおける役割を果たすため精一杯業務に取り組みつつ、週末は現地の学校に通い専門的なファイナンスや会計の勉強を続けられたそうです。IASBでは現在、基本財務諸表プロジェクト(例えば、損益計算書を投資家の投資判断により有用なものとするため、業績指標の記載や比較可能性を高める方法を検討)に従事されています。IASBの仕事で特に苦労されていることとして、公開会議で使われる文書を英語で執筆する際にネイティブスピーカーが書く文書と同じレベルのクオリティが求められるが容易ではない、といったこともお聞きすることができました。

 

  最後に、国際機関での活躍に向いている人はどのような人であるかとの問いかけに対しては、ご自身ももっと努力が必要としつつも、その国際機関が国際社会で果たさなければならない役割に共感し、与えられた業務に信念と責任感を持って取り組める人、その組織に貢献する上で必要となるスキルを身に着けるために努力を惜しまない人ではないか、とのご発言がありました。国際舞台での活躍を目指す会員に対しては、ご自身の経験からも英語の問題は努力次第で解決できること、今働いている組織での役割をしっかりと果たしつつ、国際的に活躍できる人材になるという夢を持ち、仮に機会が与えられた時に十分に貢献できるよう事前に必要な研鑽を積むこと、それが結果的に将来の道を開くことにつながるのではないか、とのご意見でした。更に、実際に機会が与えられたら全力で取り組み、与えられた役割を全うすること、その結果として更に新しい機会が生まれる可能性もあるかもしれない、とのことでした。「難しい会計士試験に合格するという目標に向かって努力をされ、それを達成された皆さんですから、夢の実現に向けて進んでいくことができると思います。」とのメッセージをいただきました。

 

<インタビューアー>

武藤 智帆(国際団体対応専門委員会専門委員)

関根 和昭(海外及び国内向け情報発信専門委員会専門委員)

 

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