1.国際監査・保証基準審議会
(1) 国際監査基準(ISA)
国際監査・保証基準審議会(IAASB:International Auditing and Assurance Standards Board:IAASB)は、2009年から監査報告書プロジェクトを開始し、2015年1月に国際監査基準(International Standards on Auditing:ISA)701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な事項のコミュニケーション」(原題:Communicating Key Audit Matters In The Independent Auditor's Report)を公表しました。
ISA 701では、上場会社の一般目的の財務諸表に対する監査報告書において監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM)を報告することが要求されています。
基準の原文はIAASBウェブサイト又は下記リンクよりご参照ください。
- 2022 HANDBOOK OF INTERNATIONAL QUALITY MANAGEMENT, AUDITING, REVIEW, OTHER ASSURANCE, AND RELATED SERVICES PRONOUNCEMENTS
- E-INTERNATIONAL STANDARDS(eIS)
会計・監査ジャーナル※解説記事
掲載号 | タイトル及び執筆者 |
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2015年3月号 | 「国際監査・保証基準審議会(IAASB)による監査報告書の改訂等」 元・国際監査・保証基準審議会メンバー 関口 智和氏 |
2014年8月号 | 「アーノルド・シルダー議長に訊くIAASBの最新動向」 元・日本公認会計士協会常務理事 住田 清芽氏 |
※『会計・監査ジャーナル』(編集:日本公認会計士協会 発行:第一法規株式会社)無断複製・転載不可
(2) Guidance & Support Tools
監査報告に係る各基準への対応のため、IAASBから以下のGuidance & Support Toolsが公表されております。
なお、これらの公表物は、IAASBによる規範性のある公表物ではなく、また、国際監査基準を修正・優先するものではありません。
公表日 (仮約更新日) |
原文 | 仮訳 |
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2015/1/30 (2017/12/27) |
Auditor Reporting-Key Audit Matters | 監査報告 -監査上の主要な事項 |
2015/4/22 (2017/12/27) |
Auditor Reporting-Illustrative Key Audit Matters | 監査報告 -監査上の主要な事項の文例 |
2016/11/30 (2017/12/27) |
The New Auditor's Report: Questions and Answers | 監査報告Q&A |
2016/3/9 (2017/12/27) |
More Informative Auditor's Reports-What Audit Committees and Finance Executives Need to Know | より情報価値のある監査報告書 -監査委員会と財務担当役員が知っておくべき事項 |
2015/1/30 (2017/12/27) |
Auditor Reporting on Going Concern | 継続企業に関する監査報告 ・参考資料(文例) |
2015/4/8 (2017/12/27) |
At a Glance:ISA 720 (Revised), The Auditor's Responsibilities Relating to Other Information | 概要「ISA720(改訂)その他の記載内容に関連する監査人の責任」 |
(3) Feedback Statement
2015年に公表された監査報告に関する基準について、利害関係者からの Feedback Statementが公表されています。
公表日 (仮約更新日) |
原文 | 仮訳 |
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2021/6/2 (2021/12/10) |
Feedback Statement Auditor Reporting Postimplementation Review | フィードバック文書: 監査報告に関する基準の適用後レビュー |
2.米国
(1) 監査基準(AS)
2007年に米国財務省において「監査職業専門家に関する諮問委員会」が設置され、2008年に同委員会からの報告書を受け、米国公開企業会計監視委員会(Public Company Accounting Oversight Board:PCAOB)は、2010年から監査報告書プロジェクトを開始しました。
プロジェクトの成果の一つとして、2017年6月1日、監査上の重要な事項(Critical Audit Matters:CAM)に関する記述を追加したAS 3101「無限定適正意見の監査報告書」(原題:The Auditor's Report on an Audit of Financial Statements When the Auditor Expresses an Unqualified Opinion)を採択しました。同年10月23日には米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission:SEC)が当該基準を承認しております。
本基準の適用時期は、CAMについては、大規模早期提出会社の監査においては2019年6月30日以降終了事業年度の監査から、それ以外のSEC登録会社の監査においては2020年12月15日以降に終了する事業年度の監査から適用されています。また、CAM以外の改訂については2017年12月15日以降に終了する事業年度の監査から適用されています。
なお、2022年6月にPCAOBによって採択され、2022年8月にSECによって承認された適合修正は、2024年12月15日以降に終了する事業年度の監査から適用されます。
原文は下記リンクよりご参照ください。
会計・監査ジャーナル※解説記事
掲載号 | タイトル及び執筆者 |
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2017年9月号 | 「米国公開企業会計監視委員会「監査報告に関する新しい監査基準~監査の透明性の向上に向けて~」」 日本公認会計士協会研究員 甲斐 幸子氏 |
2016年9月号 | 「米国公開企業会計監視委員会再公開草案「無限定適正意見の監査報告書」②」 日本公認会計士協会研究員 甲斐 幸子氏 |
2016年8月号 | 「米国公開企業会計監視委員会再公開草案「無限定適正意見の監査報告書」①」 日本公認会計士協会研究員 甲斐 幸子氏 |
2014年12月号 | 「監査報告に関する国際動向① 米国における監査報告書に係る検討について」 公認会計士 山本 雄一氏 |
2013年11月号 | 「米国公開企業会計監視委員会公開草案「無限定適正意見の監査報告書」及び「監査した財務諸表及び監査報告書が含まれる特定の開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」」 日本公認会計士協会研究員 甲斐 幸子氏 |
- ※『会計・監査ジャーナル』(編集:日本公認会計士協会 発行:第一法規株式会社)無断複製・転載不可
(2) CAMに係る調査・研究
CAMの記載による影響・運用状況について調査報告がPCAOB及び、監査品質センター(The Center for Audit Quality:CAQ)から公表されています。
公表元 | 公表日 | 原文 |
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PCAOB | 2022年12月 | Interim Analysis Report Further Evidence on the Initial Impact of Critical Audit Matter Requirements |
CAQ | 2020年12月 | Critical Audit Matters: A Year in Review |
3.英国
2008年金融危機発生以前から監査報告書の利用者の情報ニーズを満たすための方策についての議論や提言が行われておりましたが、金融危機をきっかけに英国でも様々な改革が行われました。その一環として、財務報告評議会(Financial Reporting Council:FRC)は、2011年に監査報告書の記載を拡大すること等の内容を含めたディスカッション・ペーパーを公表し、2012年以降、監査報告に関する監査基準の改訂を行っています。特に、2013年の監査基準の改訂において長文化した監査報告書の制度を導入し、2012年10月1日以降開始事業年度の監査から適用されております。
そして、ISA(UK)701を2016年の6月に公表し、2019年に改訂を行っております。
原文は下記リンクよりご参照ください。
また、FRCは、長文化した監査報告書の制度適用後の調査報告書を公表しております。
会計・監査ジャーナル※解説記事
掲載号 | タイトル及び執筆者 |
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2015年6月号 | 「監査報告に関する国際動向④ 英国財務報告評議会「長文化した監査報告書:適用初年度の経験のレビュー」 日本公認会計士協会研究員 甲斐 幸子氏 |
2015年5月号 | 「監査報告に関する国際動向③ 英国における監査報告書に係る検討について-②金融危機発生以降」 日本公認会計士協会研究員 甲斐 幸子氏 |
2015年2月号 | 「監査報告に関する国際動向② 英国における監査報告書に係る検討について-①金融危機発生前」 日本公認会計士協会研究員 甲斐 幸子氏 |
- ※『会計・監査ジャーナル』(編集:日本公認会計士協会 発行:第一法規株式会社)無断複製・転載不可
4.その他
その他の諸外国においても長文化した監査報告書が導入されており、そのうち、以下の国及び地域において、適用後の調査報告書が公表されております。
- ※公表元:Accountancy Europe