2020年06月02日
IASBは、2020年5月14日、IFRS第3号「企業結合」、IAS第16号「有形固定資産」、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の狭い範囲の修正を公表しました。本修正はすべて2022年1月1日に発効します。
また、IASBは、3つの基準の修正に加えてIASBの年次改善も公表しました。年次改善は、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」、IFRS第9号「金融商品」、IAS第41号「農業」及びIFRS第16号「リース」の設例の軽微な修正を行っています。
詳細は以下のとおりです。
IFRS第3号「企業結合」の修正
IFRS第3号における主な変更点は以下のとおりです。
- 1.IFRS第3号の認識原則は、企業結合で認識される資産及び負債が1989年版フレームワークにおける資産及び負債の定義を満たすことを要求しているが、1989年版フレームワークに代わり、2018年版概念フレームワークへの参照に変更した。
- 2.取得企業が、2018年版概念フレームワークを適用する取得日時点で賦課金を支払う負債を認識し、IFRIC第21号を適用するその後、直ちに認識を中止するならば、いわゆる「2日目の利得」を認識することになる。当該利得は、経済的な利得を描写せず、企業の財務業績のいかなる側面も忠実に表現することにはならない。「2日目の利得」の問題は、IFRIC第21号の範囲内の賦課金だけでなく、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発負債」の範囲内の他の債務からも生じ得る。この問題を回避するため、IAS第37号又はIFRIC第21号の範囲内の引当金又は偶発負債については、認識原則の例外として、取得企業は、取得日時点に現在の債務が存在するか否かを決定するため、2018年版概念フレームワークではなく、IAS第37号又はIFRIC第21号を適用する。
- 3.取得者が企業結合により取得した偶発資産を認識しないことを明確化した。
- 4.BC第125項(IFRS第3号の測定の信頼性に関する規準)が結論の根拠から削除された。
IAS第16号「有形固定資産」の修正
本修正は、企業が当該資産を意図した使用のために準備している間に生産された項目の販売により受け取った金額を、有形固定資産の取得原価から控除することを禁じるものです。その代わりに、企業はそのような販売収入及び関連するコストを純損益に認識することになります。
IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の修正
本修正は、契約履行のコストが、契約と直接関連するコストを含むことを明確化しています。契約と直接関連するコストは、契約履行の増分コスト(直接労務費及び材料費等)、もしくは、契約履行に直接関連するその他のコストの配分(契約履行のために用いられる固定資産の減価償却費用の配分等)のどちらにもなり得るとされています。
年次改善
年次改善の修正は、以下の表のとおりです。
IFRS第1号 「初度適用」 |
子会社が親会社よりも後で初度適用企業となる場合、IFRS第1号D16項(a)の免除規定を適用する子会社は、親会社のIFRS移行日に基づき、親会社の連結財務諸表に含められていた帳簿価額を用いて、すべての在外営業活動体の換算差額累計額を測定することが認められる。 |
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IFRS第9号 「金融商品」 |
金融負債の認識の中止に関する定量的判断基準である10%テスト(IFRS第9号B3.3.6項)に含めるべき手数料は、借手・貸手間で受け払いされる手数料(借手又は貸手が他方に代わり受け取った手数料、又は支払った手数料を含む)のみであることが明確化された。 | IFRS第16号 「リース」に付属する設例 |
IFRS第16号に付属する設例13から、借手が行う貸借設備の改良に関して貸手が補償を支払うという前提条件が削除された。 |
IAS第41号 「農業」 |
IFRS第13号「公正価値測定」の要求事項と整合させて、生物資産の公正価値の測定において、キャッシュ・フローの見積りには税金を含めないとする要求事項(IAS第41号第22項)が削除された。 |
詳細は、IASBのウェブサイトをご参照ください。