2020年01月31日
IASBは、2020年1月23日、負債の流動・非流動の分類を明確化するために、「負債の流動・非流動の分類」を公表し、IAS第1号「財務諸表の表示」の狭い範囲の修正を公表しました。
本修正は、財政状態計算書において、決済日が不確定な負債の流動・非流動の分類についての企業の判断の助けとなり、要件の適用の一貫性を促進することを目的としています。本修正は、企業が資本への転換により決済する可能性がある負債の分類要件の明確化も含んでいます。
IAS第1号の主な修正点は、以下のとおりです。
1.少なくとも12か月にわたり決済を延期する権利
- 負債を非流動に分類するためには、企業は負債の決済を報告期間後少なくとも12か月にわたり延期する権利を有していなければならないという分類原則(第69項(d))と関連する適用上の要求事項(第73項から第76項)の不整合を調整し、用語(「権利」など)を揃えるために修正
- 負債の分類は、報告期間後12か月以内に負債が決済されるとの経営者の意図又は見込みに影響を受けないことを明確化するために追加(第75A項)
具体的には、第69項(d)は以下のように修正されています(下記「2.決済」の第76B項に関する追加も参照)。
企業は、以下のいずれかの場合に、負債を流動負債に分類しなければならない。
(a) ...省略
(d) 負債の決済を報告期間後少なくとも12か月にわたり延期することのできる報告期間の末日現在の無条件の権利を企業が有していない場合(73項参照)。負債の条件が、相手方の選択で資本性金融商品の発行により決済される可能性のあるものであっても、分類には影響を与えない。
2.決済
- 負債のロールオーバーは既存の負債の延長であり、経済的資源の移転を含まないため、決済を構成しないとの結論を下し、さらに、負債は「経済的資源を移転する」義務として定義され、一部の種類の負債は現金以外の経済的資源の移転により決済される(例えば、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の範囲内の履行義務は、約束した財及びサービスの移転により決済される)と観察されたことから、決済の意味する当該側面を明確化する ため追加(第76A項)
具体的には、第76A項は以下のように追加されています。
負債を流動又は非流動として分類する目的上、決済とは負債の消滅を生じる相手方への移転を指す。当該移転は以下のいずれかとなり得る。
(a) 現金又はその他の経済的資源(例えば、財又はサービス)又は
(b) 企業の自己の資本性金融商品。ただし、第76B項を適用する場合を除く。
- 「負債の条件が、相手方の選択で資本性金融商品の発行により決済される可能性のあるものであっても、分類には影響を与えない」(修正前の第69項(d))とは、資本性金融商品の定義を満たし、かつ、IAS第32号「金融商品:表示」の適用により、複合金融商品の資本部分として主契約の負債から分離して認識される相手方の転換権を含む負債にのみ適用する意図を反映するため、相手方の転換権に関する記述を新たな項に移し、その範囲を明確化(第76B項)
具体的には、第76B項は以下のように追加されています。
IAS第32号「金融商品:表示」の適用により、企業が転換権を資本性金融商品として分類し、複合金融商品の資本部分として負債から分離して認識する場合、負債の条件が、相手方の選択で資本性金融商品の発行により決済される可能性のあるものであっても、流動又は非流動の分類には影響を与えない。
本修正は、変更ではなく、既存の要件の明確化であるため、企業の財務諸表へ重大な影響を与えることは想定されていません。しかしながら、本修正により企業は負債を流動から非流動へ再分類する可能性があり、その再分類は、企業の融資特約条項に影響を与える可能性があります。
本修正は、2022年1月1日に発効します。また、早期適用が容認されています。
詳細は、IASBのウェブサイトをご参照ください。