IASBが公開草案「IFRS第17号の修正」を公表

2019年08月20日

 IASBは、2019年6月26日、IFRS第17号「保険契約」(2017年5月公表)を導入している間に利害関係者が提起した懸念及び課題に対処するため、IFRS第17号の修正案を公表しました。本修正案の目的は、IFRS第17号の導入コストを削減し、企業が本基準を適用する場合の業績の説明をより容易にすることにより、引き続き導入支援を行うことです。


 本公開草案では、主に下記の論点に関する修正が提案されています。


1. 範囲除外-保険契約の定義を満たすクレジットカード契約及び融資契約
  • 保険契約の定義を満たすクレジットカード契約(特定の要件を満たす場合に限る)をIFRS第17号の範囲から除外する。
  • 保険契約の定義を満たすが保険事故に対する補償を特定額に限定する融資契約について、IFRS第17号又はIFRS第9号の選択適用を可能とする。


2. 保険契約獲得キャッシュ・フローの予想される回収
  • ある保険契約グループに直接起因する契約獲得キャッシュ・フローを、当該グループ及び当該グループの中の契約の更新から生じると見込まれる契約を含むグループに、規則的かつ合理的な基準で配分する。
  • 保険契約獲得キャッシュ・フローが配分される保険契約グループが認識される前に支払われた当該キャッシュ・フローを、資産として認識する。
  • 事実及び状況により、保険契約獲得キャッシュ・フローに係る資産が減損していることが示唆される場合、当該資産の回収可能性を評価する。


3. 投資リターン・サービス及び投資関連サービスに帰属する契約上のサービス・マージン


 現行IFRS第17号は、契約上のサービス・マージン(保険契約グループにおける未稼得利益)を、カバー単位に基づいて一定期間にわたり純損益に認識することを要求しています。カバー単位の識別に関する以下の修正が提案されています。
  • 直接連動有配当保険契約以外の契約についてのカバー単位を、保険カバーに追加して、投資リターン・サービスがあればその給付の量及び予想期間を考慮して識別する。
  • 直接連動有配当保険契約についてのカバー単位を、保険カバーと投資関連サービスの両方の給付の量及び予想期間を考慮して識別する。


4. 保有している再保険契約‐基礎となる保険契約に係る損失の回収


 基礎となる不利な保険契約グループの当初認識時又は当該グループへの不利な契約の追加時に損失を認識する場合、比例的なカバーを提供する保有している再保険契約グループの契約上のサービス・マージンを修正し、その結果として収益(income)を認識することが提案されています。修正及びその結果生じる収益の金額は以下の積で算定されます。
  • 基礎となる保険契約グループに関して認識された損失
  • 基礎となる契約グループに係る保険金請求の内、保有している再保険契約グループから回収する権利を有している一定割合


5. 財政状態計算書上の表示


 発行した保険契約ポートフォリオの内、資産であるポートフォリオと負債であるポートフォリオの帳簿価額を財政状態計算書で区分して表示することが提案されています。現行IFRS第17号では、保険契約のグループベースで表示されます。本修正は、保有している再保険契約のポートフォリオの内、資産であるものと負債であるものにも適用されます。


6. リスク軽減オプションの適用可能性


 現行IFRS第17号のリスク軽減オプションは、通常は契約上のサービス・マージンを修正する直接連動有配当保険契約に対する金融リスクの影響の変動の一部又は全部を、純損益に直ちに反映することを認めるものであり、当該金融リスクをデリバティブを使用して軽減し、特定の条件を満たす場合に限り、当該オプションの適用が可能とされています。リスク軽減オプションを拡張し、保有している再保険契約を使用する場合にも適用することが提案されています。


7. IFRS第17号の発効日及びIFRS第4号におけるIFRS第9号「金融商品」の一時的免除
  • IFRS第17号の発効日を1年延期し、2022年1月1日以後開始する事業年度とする。
  • IFRS第4号「保険契約」の修正により、IFRS第9号の一時的免除を1年延長して、当該免除を適用する企業に2022年1月1日以後開始する事業年度にIFRS第9号を適用することを要求する。


8. 経過的な修正及び救済措置
  • 修正遡及アプローチの追加的な修正により、保険契約の取得前に発生した保険金の決済に係る負債を、残存カバーに係る負債ではなく、発生保険金に係る負債として分類する。公正価値アプローチを適用する場合、当該負債を、発生保険金に係る負債として分類することを選択可能とする。
  • リスク軽減オプションを、適用開始日からではなく、移行日から将来に向かって適用することを認める。当該オプションを移行日以後に将来に向かって適用するためには、リスク軽減関係を移行日以前に指定することが必要となる。
  • IFRS第17号を保険契約グループに遡及適用することができる場合で、リスク軽減に関する所定の要件を満たす場合、代わりに公正価値アプローチを当該グループに適用することを認める。


本公開草案に対するコメント期限は、2019年9月25日です。


詳細は、IASBのウェブサイトをご参照ください。

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