IASBは、2019年8月1日、企業が財務諸表利用者に有用な会計方針の開示を提供することに役立てるため、公開草案「会計方針の開示」を公表し、IAS第1号「財務諸表の表示」及びIFRS実務記述書第2号「重要性の判断の行使」の狭い範囲の修正を提案しました。本公開草案に対するコメントの期限は、2019年11月29日です。
IASBが2017年3月に公表したディスカッション・ペーパー「開示に関する取組み-開示原則」のフィードバックでは、重要な会計方針の非効果的な開示の主な原因は、重要性(materiality)の概念を適用することの難しさにあることが示唆されました。このフィードバックは財務諸表利用者を含む利害関係者からのものであり、その多くは、IASBが開発する会計方針の開示に関する要求事項の基礎は、重要性(materiality)でなければならないことに同意しました。回答者は、会計方針に重要性があるかを決定する方法に関するガイダンスをIASBが開発するならば、有用であると考えました。
IAS第1号「財務諸表の表示」は、企業に「重要な(significant)」会計方針を開示することを要求していますが、「重要な(significant)」は定義されていません。IASBは会計方針の開示の文脈で「重要な(significant)」の定義を開発することを検討しましたが、「重要な(significant)」という用語がIFRS基準において他にも使用されていることに意図せざる帰結をもたらし得ると結論付けました。
本修正案は、企業に重要な(significant)会計方針ではなく、重要性がある(material)会計方針を要求する形にIAS第1号の文言を修正することを提案しています。会計方針に関する情報は、企業の財務諸表に含まれる他の情報と共に考える場合、財務諸表利用者が当該財務諸表を基礎として行う意思決定に影響を及ぼすと合理的に予想し得る場合には、重要性があるとされています。
修正案によるIAS第1号の主な修正点は下記のとおりです。
- 企業に、「重要な(significant)」会計方針ではなく、「重要性のある(material)」会計方針の開示を要求(第117項)
- どのように企業が重要性のある(material)会計方針を識別するかについて説明を追加(例えば、重要な取引、他の事象又は状況に関連する会計方針のすべてがそれ自体では重要ではないことを明確化)(第117A項-117D項)
また、IFRS実務記述書第2号においては、4ステップの重要性プロセスを会計方針の開示を適用するために役立つガイダンス及び設例の追加が提案されています。当ガイダンス及び設例は、財務諸表利用者にとって有用な情報に焦点を当てるニーズを強調すること、また、4ステップの重要性プロセスを、財務諸表にとって重要な会計方針に関する紋切り型(boilerplate)の開示(設例S参照)、IFRS基準の要求事項を繰り返す情報だけを含む会計方針の開示(設例T参照)にいかに対処できるかを実証することなどによって、IAS第1号修正案を支援しています。
詳細は、IASBのウェブサイトをご参照ください。