IASBは、2018年12月13日、公開草案「不利な契約-契約履行コスト」(IAS第37号の修正案)を公表しました。企業が、契約に損失が生じるかどうかを評価する際に、どのコストを含めるべきかを定めるものです。
IAS第37号は、不利な契約を、「契約による義務を履行するための不可避的なコストが、当該契約により受け取ると見込まれる経済的便益を上回る契約」と定義しています。さらに、契約による不可避的なコストは、契約から解放されるための最小の正味コストを反映し、契約コストと契約不履行により発生する補償又は違約金のいずれか低い方とされています。しかし、IAS第37号は、契約履行コストを決める際にどのコストを含めるべきかを定めていません。
IFRS解釈指針委員会には以前より、「契約履行コストを決める際にどのコストを含めるべきか」について明確化を求める要望がありました。従前、IAS第11号「工事契約」には、不利な工事契約に係る要求事項が含まれていましたが、今やIAS第11号は廃止され、2018年1月1日以後開始する年次報告期間より、契約が不利であるかを評価するためにIAS第37号を適用します。
IFRS解釈指針委員会の調査によると、いくつかの契約において、IAS第37号の不利な契約の要件の解釈が分かれるケースが見られました。その結果、IFRS解釈指針委員会は、評価をする際にどのコストを含めるべきかについて明確化するようIASBに要望し、本修正案の公表となりました。
本修正案による不利な契約に関する主な修正点は、下記のとおりです。
- 「契約履行コストは、契約に直接関連するコストから成る」とIAS第37号68項に追記
- 財またはサービスを提供する契約に直接関連するコストの例、契約に直接関連しないコストの例をIAS第37号68A項、68B項に下記のように追記
IAS第37号
68A項 財またはサービスを提供する契約に直接関連するコストは、下記を含む。
(a)直接労務費(例えば、財の製造及び引渡し、またはサービスの相手方への直接提供に携わった従業員の給料・賃金)
(b)直接材料費(例えば、契約履行に使用された消耗品)
(c)契約活動に直接関連するコストの配分額(例えば、契約管理・監督のコスト、保険料、契約履行のために使用された 工具・設備・使用権資産の減価償却費)
(d)契約上、明示的に相手方に請求可能なコスト
(e)企業が契約を締結したことだけが原因で発生したその他のコスト(例えば、外注先への支払)
68B項 一般管理費は、契約上、明示的に相手方に請求可能でない限り、契約に直接関連しないコストである。
本修正案は、IASBが不利な契約に関する情報の開示を新たに要求するものではありません。
また、本修正を最初に適用する事業年度の期首(適用開始日)に存在する契約に当該修正案を適用しなければなりません。比較情報を修正再表示してはならない代わりに、適用開始日における利益剰余金期首残高(または、適切な場合には他の資本項目)への修正として、本修正を初めて適用する累積的影響を認識しなければなりません。
本修正案に対するコメントの期限は、2019年4月15日です。
詳細は、IASBのウェブサイトをご参照ください。