IASBが企業結合に関する事業の定義を修正

2018年11月05日

 IASBは、2018年10月22日、事業の定義を改善するためにIFRS第3号「企業結合」の狭い範囲の修正を公表しました。IASBは、IFRS第3号の適用後レビュー(PIR)におけるフィードバックを受けて本修正を行いました。


 本修正は、取引が事業の取得なのか、資産の取得なのかを企業が判定する際に役立つことを目的として、事業の定義を明確化するものです。取得企業は、事業を取得する場合に限りのれんを認識するため、事業と資産グループの区別は重要です。


主な修正点は、下記のとおりです。

  • (1)事業の要件として、取得した活動及び資産の組合せが、少なくとも、アウトプットを創出する能力に著しく寄与するインプット及び実質的なプロセスを含まなければならないことを明確化
  • (2)市場参加者が、欠けているインプット又はプロセスを差し替え、アウトプットを創出し続けることができるか否かの評価を削除
  • (3)実質的なプロセスが取得されたか否かについての企業の判断に役立つガイダンス及び実例を追加
  • (4)顧客に提供される財及びサービスに焦点を当て、コストを低減する能力の参照を削除することにより、事業及びアウトプットの定義の縮小
  • (5)取得した活動及び資産の組合せが事業に該当するか否かの判断を簡素化する任意の集中テストを追加

 IFRS第3号は、IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)の共同プロジェクトの成果であり、US GAAPにおける事業と同じ定義が示されていました。しかし、IFRS第3号及びUS GAAPのPIR後、実務上、US GAAPにおける事業の定義は、IFRS第3号よりも広い範囲の取引を対象とすることが指摘されていました。IASBが定義を明確したことにより、両審議会のそれぞれの基準が近づくことになり、なお基準差異は存在しますが、IFRS適用企業、US GAAP適用企業両方により首尾一貫した事業の定義が適用されることとなりました。


 なお、本修正とFASBが2017年に公表した会計基準更新書(ASU)第2017-01号「事業の定義の明確化」の主な差異は下記のとおりです。

項目 IFRS
(IFRS第3号)
US GAAP
(ASU第2017-01号)
テキスト集中テスト(※)
テキスト任意(B7A - B7B項参照)

公正価値の集中をどのように識別するかについてのガイダンスはUS GAAPとほぼ同じ内容であるが、IFRSでは、通常は必要とされる計算の確認及び設例が追記された(B7B項(b)、Example I参照)。
テキスト必須
テキストアウトプットがない場合の事業の取得
取得した外部委託契約は、たとえ取得した活動及び資産の組合せからアウトプットがなくとも、実質的なプロセスを行う組織的な労働力にアクセスでき得ることがあり、いくつかのケースにおいて、事業が取得されたと判断される。 アウトプットが存在しない場合は、取得した組合せが従業員で構成される組織的な労働力を含む場合のみ、事業が取得されたと判断される。
テキスト組織的な労働力の差し替え
組織的な労働力の差し替えが困難である場合は、組織的な労働力が、アウトプットを創出する能力にとって重要であるプロセスの遂行を示していることが明確化された(B12D項参照)。 IFRSのような明確化はない。
テキスト取得したプロセスが実質的であることを示す指標
US GAAPのような記述はない(BC21R項(d) 参照)。 僅少とはいえない金額ののれんの存在は、取得したプロセスが実質的であることを示す指標である。
テキスト経常的活動から生じるその他の収益
狭められたアウトプットの定義が、経常的活動から生じるその他の収益を含むことが明確化された(B7項(c)参照)。該当するその他の収益の例としては、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の対象外の契約から生じる収益が挙げられている。 IFRSと同様の見解
テキスト事業及びアウトプットの定義
事業の定義を修正されたアウトプットの定義と合わせた(B7項(c)参照)。 事業の定義とアウトプットの定義を合わせていないが、事業の定義は、アウトプットに関するガイダンスを含むサポート・ガイダンスを明示的に参照している。

(※)取得した総資産の公正価値のほとんどすべてが単一の識別可能な資産又は類似した識別可能な資産グループに集中している場合、集中テストは満たされる(活動及び資産の組合せは事業ではないとされる)。

 企業は、修正後の事業の定義を2020年1月1日以後に行われる取得に適用することが要求されます。また、早期適用が容認されています。

詳細は、IASBのウェブサイトをご参照ください。

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