IASBは、2015年10月28日、企業の経営者が情報に重要性があるかどうかを判断する際に役立つガイダンス案を公表しました。本ガイダンスは開示を改善するIASBの広範な取組みの一部です。
重要性の概念は、利用者の投資判断に影響を及ぼし得る財務情報がすべて財務諸表に含まれることを保証する目的で経営者が情報を取捨選択する際の、フィルターとしての役割があります。またこれにより、経営者が重要性のある情報を明確かつ効率的な方法で表示することが可能になり、重要性のない情報が除かれることになります。
経営者は重要性の概念の適用方法に確信を持てないことがあり、その結果、財務諸表にどの情報を開示又は表示するかを決定する際に、判断を用いるよりもチェックリストとして基準上の開示に係る要求事項に従う場合があります。一部では、チェックリスト・アプローチを、時間の節約、監査人や規制当局からの異議申し立てや精査の回避、起こり得る訴訟に対する保護としてとらえられているように見えます。しかし、このアプローチの結果として、財務諸表上に重要性のない情報を過度に開示することにより有用な情報が目立たなくなる可能性があり、また財務諸表が理解可能性の低いものになる可能性があります。本ガイダンス案は、このような懸念に応えるために、実務記述書の公開草案という形で開発されました。
情報に重要性があるかどうかは、様々な要因や企業特有の状況に左右され、判断を要する問題です。また、どの情報に重要性があるかの判断には、財務諸表利用者や当該財務諸表に基づき利用者が行う意思決定についての理解が必要です。
定性的および定量的な開示の改善には、監査人、規制者、企業及び基準設定主体による共同の取組みが必要であるため、IASBは、IAASB(国際監査・保証基準審議会)及びIOSCO(証券監督者国際機構)と意見交換しました。
IASBは2014年にIAS第1号「財務諸表の表示」の修正を行い、関連する情報に重要性がない場合、企業は基準上の特定の開示に係る要求事項を適用する必要がないことを明確化しました。重要性に関する本ガイダンス案により、この修正は完了します。また、IAS第1号の修正により、特定の要求事項への準拠が重要性のある情報の開示に不十分である場合は、企業が追加の情報を提供するかどうかを検討する必要があることを明確にしました。
本実務記述書の公開草案に関するコメントの提出期限は、2016年2月26日です。
詳細は、IASBウェブサイトをご参照ください。