IASBは、2014年8月20日、公開草案「未実現損失に係る繰延税金資産の認識」(IAS第12号「法人所得税」の修正案)を公表した。
IAS第12号は、繰延税金資産を含む法人所得税の会計処理を扱う。本修正案は、公正価値で測定される負債性金融商品に係る繰延税金資産の会計処理を明確にするガイダンスを提案するものである。現在の実務における多様性に対応するための修正案であり、企業が税金損失を報告する状況に関連している。
この論点は、IFRS解釈指針委員会(IFRS-IC)に対して寄せられたサブミッションを発端としたものであり、IFRS-ICは検討の結果、IASBにIAS第12号の修正を提案した。
具体的には、以下の状況における公正価値で測定される負債性金融商品に係る繰延税金資産の認識について検討している。
(a) 市場金利の変動により負債性金融商品の公正価値が原価を下回る
(b) 負債性金融商品保有者が、負債性金融商品を満期まで保有した場合に、すべての契約上のキャッシュ・フローを受領する可能性が高い
(c) 保有者は公正価値が回復するまで(満期時となる可能性がある)、負債性金融商品を保有する能力と意図がある
(d) 負債性金融商品の税務基準額が、売却もしくは満期まで原価である。負債性金融商品の税務基準額は、税法の減損損失認識要件を満たさないため、減損損失を認識しない
(e) 保有者の将来課税所得が、将来減算一時差異をすべて活用するには不十分である
IASBは、IAS第12号におけるいくつかの原則の適用方法が不明瞭であることが、上記における実務上の多様性の要因ととらえ、以下を含む、IAS第12号の強制的なガイダンスの修正、設例の追加を提案した。
① 公正価値で測定され、税務基準額が原価である場合、満期に元本が支払われる固定金利の負債性金融商品にかかる未実現損失は、将来減算一時差異を生じさせる。
② 将来の課税所得に関する企業の見積りには、帳簿価額を超える資産の回収額を含める。
③ 将来の課税所得に関する企業の見積りには、将来減算一時差異の戻入から生じる税務上の損金算入額を除く。
④ 将来減算一時差異を活用できる課税所得が入手可能かどうかを評価するにあたり、将来減算一時差異を他の将来減算一時差異との組合せで評価する。ただし、税法において将来減算一時差異の活用を特定の種類の所得に対してのみに制限している場合には、このような将来減算一時差異は、適切な種類の将来減算一時差異のみとの組合せで評価する。
IFRSを適用している企業は、不要なコスト負担を避けるため、遡及適用は限定されている(全面遡及適用は認められる)。IFRS初度適用企業は、全面遡及適用が求められる。
コメント期限は2014年12月18日。
詳細はIASBウェブサイトをご参照ください。