2014年3月26日、英国の財務報告協議会(FRC)は、無形資産およびその償却の会計処理に関して投資家の見解をまとめたペーパーを公表した。このペーパーは、無形資産のすべての論点をカバーしているわけではなく、投資家が特に懸念を示している下記の論点をまとめたものである。
・ 企業結合で取得した無形資産
・ 自己創設無形資産
・ 個別に取得した無形資産
・ 表示と開示の適切性
なお、27名の投資家(主に英国、一部ドイツ)が、FRCの用意した質問に回答する形で見解を示している。リサーチ期間は2013年4月から2014年1月である。
企業結合で取得した無形資産
回答者の半数以上が、現行のIAS第38号「無形資産」とは異なる会計処理を好む(財政状態計算書:B/S(52%)、損益計算書:P/L(59%))と回答した。
B/Sで現行基準とは異なる会計処理を好むと回答した回答者(52%)の過半(全体の37%)は、「消耗性(wasting)」無形資産と「有機的に置換わる(organically replaced)」無形資産を区別していると述べた。消耗性無形資産(無線通信スペクトラムや特許など)は、企業から分離可能で耐用年数を確定でき識別可能な収益の流れがあり、有機的に置換わる無形資産(顧客リストやブランドなど)は、消耗性無形資産ではないものという捉え方である。彼らは、消耗性無形資産は個別に識別・資産化すること、一方、有機的に置換わる無形資産はのれんから分離せずに会計処理するのがよいと考えている。
また、当初認識後の会計処理について、IAS第38号とは異なる会計処理を望むという見解も示された。回答者の33%は、消耗性無形資産は耐用年数で償却し、有機的に置換わる無形資産は規則的償却ではなく年次の減損テストを実施すべきであると考えている。一方、26%は、企業結合で取得したすべての無形資産を、規則的償却ではなく年次の減損テストを実施するのがよいという見解であった。
EPSレシオの検討の際、74%の回答者が、企業結合で取得した無形資産の償却費について、すべてもしくは状況に応じて加算していると回答している。
自己創設無形資産
63%の回答者は、IAS第38号の開発費の資産計上を支持した。なお、費用処理が求められる研究費についても資産化すべきという回答が15%あった。一方、19%はすべての研究開発費を費用処理すべきと回答した。これらの回答者は共通して、開示について懸念を示しており、企業が実務ではどのように会計方針を適用しているか(研究と開発の区分方法、資産計上額の決定方法など)が明確に開示されていないと回答しており、資産化に関して企業が整合したアプローチをとっていないようであると言っている。
個別に取得した無形資産
89%が個別に取得した無形資産を資産化することに賛成し、56%がその無形資産は毎年償却すべきであると回答した。
表示と開示の適切性
投資家の多くは、開示の質について懸念を示した。投資家が追加の開示を求めた項目は、すでにIFRSで求められているものも多く含まれていた。これは、作成者が規定を順守していない、もしくは情報は開示されているが詳細さに欠けている、または利用者のニーズを満たしていない、などの理由が考えられる。
FRCは、このレポートは、投資家の見解をまとめたものであり、見解に対する回答を示したものではないが、IASBが分析や調査をするうえで役立つことを期待すると記載している。また、作成者にとっても、投資家とのコミュニケーションにおいて改善できる分野を示しており、目的適合性があるとコメントしている。
詳細は、UK FRCウェブサイトご参照ください。