専門情報

監査ファイルの適切な整理並びに監査調書の管理及び保存に係る留意事項(通知)

掲載日
2023年03月17日
副会長(自主規制担当) 小倉 加奈子
 昨今、監査事務所における監査調書の整理、管理及び保存に関し、適切な運用がなされていないこと及びこれに端を発する不適切な検査対応に起因し、監査法人の業務運営が著しく不当であるとして(公認会計士法(昭和23 年法律第103 号。)第34 条の21 第2項第3号への抵触)、公認会計士・監査審査会からの行政処分勧告や、金融庁からの行政処分が行われた事例が見受けられます。このような状況は、監査人が監査意見を表明するための合理的な基礎を得ていたかどうか、監査基準等に準拠して監査を実施したかどうかについての疑念を生じさせるとともに、職業的専門家としての誠実性の欠如として、財務諸表監査に対する社会からの信頼性を損なうことにもつながりかねません。
 監査人は、監査意見の表明に当たり、監査基準、監査における不正リスク対応基準(法令により準拠が求められる場合)及び監査基準報告書を含む当協会が公表する監査実務指針のうち個々の監査業務に関連するものは全て遵守しなければなりません。監査人は、これらの遵守すべき基準等に基づいて、監査報告書を発行するための基礎を得たことを示す十分かつ適切な記録として、また、一般に公正妥当と認められる監査の基準及び適用される法令等に準拠して監査計画を策定し監査を実施したことを示す証拠として、監査調書を作成し保存することが求められます。
 会員各位におかれましては、職業専門家として遵守すべき基準等に準拠し、監査調書の作成及び保存に関する体制の整備状況を確認し、その適切な運用状況の確保をお願いします。
 当協会では、会員の実施した監査業務が、監査基準等職業専門家として遵守すべき基準に準拠して行われたことを確認するため、会員組織としての自主的な規律により品質管理レビュー制度を運用しています。品質管理レビューにおいて、個別監査業務の検証は、監査人が作成した監査調書に基づき実施することになるため、監査調書の不適切な管理は、品質管理レビュー制度の信頼性や有効性にも影響するものとなります。
 また、2022 年5月11 日に成立した公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律では、会計監査の信頼性確保のための方策として、上場会社等の監査を担う監査事務所に対する登録制が導入されることとなりました。これにより、上場会社等の監査を行う監査事務所に対しては、上場会社等の監査を公正かつ的確に遂行するための体制の整備が求められることとなり、当協会は、上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性を確認するための方法として、品質管理レビューの実施結果を利用することとなります。
 このため、特に、上場会社等の監査を行う監査事務所にあっては、監査調書の整備及び保存に関する体制の整備・運用に当たり、監査調書の電子化や監査調書の変更を防止するための具体的な措置を講じることの重要性について、ご確認いただくようお願いします。


以  上 

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