IASBは、2020年4月24日、公開草案「Covid-19に関連した賃料減免-IFRS第16号の修正案」を公表し、借手がcovid-19(新型コロナウィルス疾患)に関連した家賃免除や一時的な家賃減額などの賃料減免を会計処理することを容易にするためにIFRS第16号「リース」の修正を提案しました。本公開草案に関するコメント期限は、2020年5月8日です(コメント期間14日)。
IFRS第16号は、リース料の変更(賃料減免を含む)に係る会計処理方法を規定しています。賃料減免がリースの条件変更とみなされるか否かを判定するために、リース契約ごとに評価することを借手に要求しており、該当する場合、借手は改訂後の割引率を用いてリース負債を再測定しなければなりません。しかし、企業がパンデミックの間に直面する多くの課題を考慮すれば、covid-19に関連した大量の賃料減免が想定される中、各リース契約の条項に基づいて条件変更か否かを評価し、リース負債の再測定を行わなければならないとすると、大変な実務上の負担を企業に課すことになります。
本公開草案の提案の目的は、covid-19に関連した賃料減免にIFRS第16号を適用する際、リースに関する有用な情報を投資家に引き続き提供することを可能にしながら、借手に実務上の救済を与えることです。
本公開草案の主な提案は以下のとおりです。なお、本公開草案は貸手についての変更は提案していません。
1.実務上の便法
本修正案は、実務上の便法として、借手がcovid-19に関連した賃料減免がリースの条件変更であるかどうかを評価しないことを選択できることを提案しています。当該選択を行う借手は、covid-19に関連した賃料減免から生じるリース料の変更を、当該変更がリースの条件変更でないとした場合にIFRS第16号を適用して当該変更を会計処理するのと同じ方法で会計処理することになります(例えば、実務上の便法を適用する借手は、一般的には、リース料の免除をIFRS第16号38項に基づき、変動リース料として会計処理することになります)。
当該実務上の便法が適用されるのは、covid-19パンデミックの直接の結果として生じる賃料減免に対してのみであり、かつ、以下の条件のすべてが満たされる場合のみであることを提案しています。
- (a)リース料の変更の結果、当該リースの改訂後の対価が、当該変更直前のリースの対価と実質的に同額か又はそれを下回ること
- (b)リース料の減額が、2020年に当初の期限が到来する支払にのみ影響を及ぼすこと
- (c)当該リースの他の契約条件に実質的な変更がないこと
2.発効日及び経過措置
借手が本修正を以下のように適用することを提案しています。
- (a)2020年6月1日以後開始する事業年度に適用する。早期適用は認められ、本修正の公表日に発行が未だ承認されていない財務諸表も含まれる。
- (b)遡及適用し、本修正の当初適用の累積的影響を、借手が本修正を最初に適用する事業年度の期首時点の利益剰余金(又は、適切な場合、資本の他の内訳項目)の開始残高への修正として認識する。
IASBは、本公開草案の提案に対して受け取るコメントを検討し、修正案を進めるべきかどうかを決定し、結果として生じるIFRS第16号の修正を2020年5月末までに完了する計画です。
詳細は、IASBのウェブサイトをご参照ください。