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会計制度委員会研究報告第5号「多通貨会計のガイドライン」

掲載日
1991年12月02日
 常務理事 北村吉弘

 会計制度委員会では、多様化・複雑化する外貨建取引に関連して多通貨会計について調査研究を行っておりましたが、このたび同委員会から研究報告第5号「多通貨会計のガイドライン」として答申があり、12月2日の常務理事会で審議承認され、同日の理事会に報告されました。
 多通貨会計とは円、ドル、ポンド等各種の通貨建で取引を行っている場合に、これらの取引を通貨別に記録しておき、一定の時点で基本通貨に換算して総合試算表を作成するという会計上の記録計算の方法です。したがって外貨建取引の記録に当たって、対象となる取引をその都度基本通貨に換算する必要がないので、外貨建取引が大量かつ頻繁に行われる場合であっても、その記録計算を容易に行うことができます。
 また、外貨建取引が盛んになるに連れて為替リスクの管理が重要な課題になりますが、多通貨会計によればこれを効果的に行うことができます。すなわち、外貨建取引であっても同一通貨間の取引、例えば米ドルで資金を調達して米ドルで貸し付けるというような取引からは為替損益は発生しませんが、異種通貨間の取引、例えば米ドルで資金を調達し、円貨を購入して貸し付けるというような取引については、その後における為替相場の変動により為替損益が発生します。ところで多通貨会計では異種通貨間の取引が行われますと、それぞれの通貨建記録の間、上記の例ではドル建記録と円建記録との間に貸借関係が生じますが、この貸借関係は「通貨振替勘定」として処理されますので、「通貨振替勘定」の残高が事実上為替リスクに曝されている金額を示すことになります。したがって、多通貨会計によれば特別の手立てを講ずることなく、日々の会計記録の中から「通貨振替勘定」の残高を把握し、これにより為替リスクの管理を行うことができることになります。
 多通貨会計は、会計上の記録計算の方法であって会計処理の基準となるものではありません。したがって我が国の現行の外貨会計制度に適合するようにそのシステムを組むこともできますが、あまり複雑な仕組みにすると多通貨会計の長所が失われるということから、原則として外貨建資産負債はすべて決算日レートで換算することが前提になっています。このために我が国において財務会計上多通貨会計を採用できるのは、外国為替公認銀行等一部の企業に限られています。
 しかしながら、多通貨会計は、外貨建取引が大量かつ頻繁に行われる場合であってもこれに関する記録計算が容易であり、加えて為替リスクの管理を効果的に行うことができるなど特色のある記録計算の方法であって、今後その採用を意図する企業も少なからずあるものと思われます。また、これと併せて、同会計の基礎にある外貨換算の考え方は、国際化が進む企業の経営活動に関連して考慮に値するものと考えられます。
 このようなことから、会計制度委員会において、多通貨会計の仕組み、機能、現行の外貨会計制度の下における採用の可否、外国企業における採用の状況等について調査研究を行い、今回の答申になったものです。

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