みすず監査法人の監査業務の停止に伴うコンフォート・レター発行業務の取扱いについて
- 掲載日
- 2007年06月29日
平成19 年 6月 29日 |
日本公認会計士協会 |
副会長 増田 宏一 |
みすず監査法人は、平成19年5月30日開催の定時社員総会において、本年7月31日をもって解散することを決定いたしました。同監査法人は、この解散日をもって監査法人としての業務を終了し、同監査法人が実施していた監査業務は、多くの場合、担当の公認会計士を含め他の監査事務所に引き継ぐこととされています。このような多数の監査人の交代が生じる特殊な状況の中で、みすず監査法人が前任監査人となるケースでは、新規証券の発行に影響を及ぼす可能性があるため、緊急的な対応として、後任監査人が本業務を行うに際しての留意事項について、ここにお知らせします。
1.コンフォート・レターの取扱い
監査人から事務幹事証券会社への書簡、いわゆるコンフォート・レターの取扱いについては、監査・保証実務委員会報告第68号「監査人から事務幹事証券会社への書簡について」(最終改正平成18年9月25日 日本公認会計士協会、以下「報告第68号」とする。)が実務上の指針として、また、「「監査人から事務幹事証券会社への書簡」要綱」(最終改正 平成19年4月3日 日本公認会計士協会・日本証券業協会、以下「要綱」とする。)が日本証券業協会との合意文書として、それぞれ公表されている。
2.前任監査人が不在となる場合の監査人の交代(問題の所在)
監査人の交代に関し、報告第68号では、「6.監査人交代時の取扱い」において「監査人が交代した場合、後任監査人は前任監査人が監査した期間における財務情報については責任を負うことができないため、調査手続の対象としてはならない。」としている。また、要綱では、「Ⅸ 監査人の交代」において「発行会社及び事務幹事証券会社は、前任監査人に対して前任監査人が従事した期間における財務情報に関する調査を依頼することができる。この場合、前任監査人は届出書等提出時には、監査人の地位にないこと等を総合的に勘案した上で、当該依頼内容に関する受諾の可否を決定する。」としている。したがって、監査人が交代した場合、前任監査人が受諾したときのみ、前任監査人が監査した期間における財務情報に関するコンフォート・レターを当該前任監査人が発行することとなる。
しかしながら、みすず監査法人が監査業務を停止した後は、前任監査人としてコンフォート・レターを発行することは不可能となるため、新規証券の発行に影響を及ぼす可能性がある。
3.後任監査人の対応に関する考え方及び留意事項
通常の監査人交代のケースでは、後任監査人は「合意された手続」であっても、前任監査人が監査した期間における財務情報に関する手続を実施することは、報告第68号の趣旨を踏まえると適当ではないと思われる。しかしながら、以下の(1)①から⑤の要件を満たしたような場合には通常の監査人の交代のケースと異なる側面もみられるため、以下の(2)の手続を発行会社及び事務幹事証券会社から求められた場合、「合意された手続」により実施することは可能であると考えられる。
(1) 実施するための要件
① みすず監査法人を前任監査人とする監査業務を受諾し遂行していること
② 平成20年7月までに発行される報告書であること
③ 監査基準委員会報告書第33号「監査人の交代」に定める監査業務の引継ぎが終了していること
④ 監査業務の停止に伴い、みすず監査法人が前任監査人としてコンフォート・レターを発行できないこと
⑤ 合意された手続に係る業務契約書を締結すること
(2) 実施可能な手続
報告第68号に定める「届出書等に記載されている財務諸表等以外の財務情報」の調査(届出書等に記載されている財務諸表等以外の表、統計資料及びその他の財務情報を内部統制の管理下にある資料等と照合する手続)
※ この実施可能な手続の中に、報告第68号に定める「事後変動」の調査及び「届出書等に含まれる監査報告書及び財務諸表等に関する事項(前任監査人の担当分のみ)」の調査を含めることは適切ではないと考えられる。
(3) 「合意された手続」により上記(2)の手続を実施する際に留意すべき事項
① 「合意された手続」による報告書の本文に、以下の内容を織り込む必要があることに留意する。
・ 報告第68号に定める書簡ではないこと
・ 対象とする決算期の財務諸表については監査を実施していないため、当該「合意された手続」の報告書を提出しても、当該財務諸表に関しては一切責任を負わない旨
② 当該報告書は、報告第68号のコンフォート・レターに該当しないものの、上記(2)の手続を決定する上では、報告第68号「9.書簡作成に当たっての基本的留意事項」の趣旨を十分に踏まえる必要があることに留意する。
③ 「合意された手続」に関する業務契約書に、以下の内容を織り込む必要があることに留意する。
・ 要綱の参考様式(「監査人から事務幹事証券会社への書簡」作成業務契約書)第10条と同等の損害の賠償の限定
・ 対象とする決算期の財務諸表については監査を実施していないため、当該「合意された手続」の報告書を提出しても、当該財務諸表に関しては一切責任を負わない旨
以 上
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