Q公認会計士を目指した経緯と公認会計士試験合格後の略歴を教えてください
私が公認会計士試験に合格したのは今から半世紀以上も前の話です。当時は日本の女性公認会計士は全部で20人くらいだったと思います。ですから公認会計士合格後の略歴も半世紀前の女性を取り巻く職場環境を抜きには語れないと思います。
公認会計士試験にチャレンジしたのは、当時の女性の大学進学率は5%弱(男性でも20%)で、女性の大学卒業後の進路は社長秘書や結婚までの腰掛的なものが多く、たとえ無事一般職に就けたとしても今とは比べ物にならないガラスの天井があったなかで、一生働き続けるためには男女平等の資格が必要だと考えたからです。
在学中に無事合格はしたものの、女性を受け入れてくれる監査法人もなかなか見つからず、個人事務所で受けた面接では「女性だから日給は××で良いね。」と言われて驚かされたものです。運よく大学の先輩の紹介で監査法人朝日会計社(有限責任 あずさ監査法人の前身)に採用されましたが、研究職にも興味があったので、同時に大学院に進み、監査と会計学研究に半分ずつ時間を費やしました。その後、大学院博士課程を終えて国立大学に就職が決まった時点で研究者の道に進むことになりました。現在と違い、研究者が監査と二足の草鞋を履き続けることは許されない時代だったこともありますが、ビジネスホテルもない時代で、出張先では旅館泊まりになる等、女性にとってはまだまだハードルが高い業界だったと思います。ただし研究職のほうの就職も順風満帆だったわけではなく、指導教授から「4年制大学には女性のポストはないでしょう。」と言われ、暗澹たる気持ちになったのを覚えています。大学の女性教員比率30%を目指している昨今の状況は羨ましい限りです。
そのような状況下でなんとか大学教員のポストを得て、以来、700人近いゼミ生を世に送り出し、その中から100人を超える公認会計士を送り出しました。結果的に、残した業績は研究というより教育のほうだったような気もします(笑)。
Q現在の仕事内容について教えてください
8年前に大学を70歳で定年退職し、現在は複数の大学の理事や監事、複数の公益法人の理事、また監査法人の独立第三者委員等を務めています。定年退職前の60代には複数の上場企業の社外監査役や社外取締役を務めていたこともありますが、最近は公益的なポストしかオファーがないのは、やはり歳のせいだと思います(笑)。
Q最近興味のあるトピックを教えてください(会計士業界以外のトピックでも可)
ロシアがウクライナに侵攻して以来、ウクライナの惨状が心配でたまりません。イスラエルのガザ侵攻も然りです。私の青春時代に共有されていた「戦争を絶対に繰り返さないための世界秩序」が日に日に崩れていっているようでなりません。それを考えると夜中に目が覚めることもあります。公認会計士として、会計学の研究者として、一市民として、自分に何ができるのかを考える日々です。
Qワークライフバランス実現に向けて、工夫されていることはありますか
Q子育ての大変な時期をどのように乗り切りましたか
産休も育休も取らずに乗り切ってきましたが、その時期はお給料の大半を家事手伝いの方への謝礼に使いました。育児に使う時間はどうにもならないとしても、家事は外注できると考えて乗り切ってきました。今から振り返るとこの期間の業績リストはスカスカの状態ですが、それもやむを得ないことだったと思います。なにもかも手に入れようとすると何も手に入らないと割り切ると少し楽になります。
Q育児との両立で悩んでいる人へのメッセージをお願いします
長い一生で考えると、育児の時期はほんの短い期間と考えることもできます。その時期に仕事上では多少のハンディキャップを抱えても、育児期間を楽しむつもりで頑張ってください。その期間は多少劣後しても、きっといつかは追いつけるし、報われる時が来るはずです。
Q公認会計士試験志望者へのメッセージをお願いします
大げさなようですが、歴史的にも公認会計士は人類社会の発展に少なからず貢献してきました。公認会計士試験に合格したあとはそのことを念頭に置いて、一公認会計士として与えられた持ち場で頑張って欲しいと思います。皆さまを心よりお待ちしています。