<会社役員>篠木良枝さん(事業会社役員)

Q公認会計士試験合格後の略歴を教えてください

 2003年に新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)に入所後、2017年に上場準備会社の常勤監査役に就任し、現在はベイシス(株)、(株)HRBrain、(株)ライナフ、エンバーポイントホールディングス(株)の社外役員に就任しています。

Q現在の仕事内容について教えてください

 上場会社等の監査役、監査等委員です。監査役等は企業価値向上のため、内部監査や監査法人と連携しながら、独立した立場で取締役の職務執行の監査監督を行い、監査報告を作成します。具体的な内容は、監査役会等、取締役会といった会議体への出席、常勤監査役や社長、内部監査人、会計監査人とのコミュニケーション、開示書類の確認などです。私が就任している会社は、ベンチャー企業で収益が拡大しガバナンス体制を整えている成長段階の会社が多いので、活気があり優秀な人に出会えて、自身も勉強になることが多いです。

Q仕事を行う上で心がけていることを教えてください

 役員は株主の負託を受けて長期的な企業価値の向上を目指しているので、社外役員として経営方針や戦略は目標に資するものなのか、業績は想定通りに進捗しているのかを客観的に判断して、疑問を投げかけたり、議論を求めたりすることが求められていると思います。社内役員や社員が問題意識として持っているものの、発言しづらいことを発言することも重要だと思います。経営判断の原則から取締役には広い裁量が認められていますし、リスクを取らなければリターンは得られないので、何でも反対すればよいというものではありません。また、会社のためを思っての発言であっても納得して聞き入れてもらえなければあまり意味がありません。そのため、情報収集を行うこと、円滑なコミュニケーションを取ることを心がけています。

Q仕事以外で大事にしていることはありますか

 常に新しい情報や知識を取り入れ、人に会って、自分をアップデートしていくことを大事にしています。キャリアの最初が市役所の生涯学習課での勤務だったので、学び続けることの重要性を最初に知ったことは良かったです。市役所から公認会計士へキャリアチェンジし、それまでの経験は無駄になったかというとそんなことはありませんでした。これから社会に出ていく学生さんは、将来自分が何をしたいのか悩むこともあると思うのですが、学生だと見える仕事の幅が限られますし、働いてみて世の中にはこんな仕事があるのだなと分かってくるので、まずは目の前のことを頑張って新しい世界に飛び込んでみるといいと思います。

Q座右の銘は何ですか

 素直な心と広い視野です。年齢を重ねると段々と思い込みが強くなったり、偏狭になっていくことがあるので、意識しています。

Q子育ての大変な時期をどのように乗り切りましたか

 4歳になるまで子どもが年がら年中風邪をひいていたので、母や義理の母にしょっちゅう関西から手伝いに来てもらっていました。真冬に息子と母と義理の母が全員倒れて、「あ、駄目だ。仕事に行けない、どうしよう。」となったこともありました。子育ては当然保護者全員が担うべきなのですが、どちらかがプロジェクトオーナーにならざるを得ないなという実感があります。当面は子育て優先で仕事は続けることを優先にして細く長くいこうと思えてから、楽になりました。一時的にキャリアがスローペースになることも、あるいはお金をかけて子どもを預けたり家事を外注したりして頑張って働くことも、どちらも正解だと思います。大変な時期がずっと続くわけではなく人生は長いので、子育て経験が無駄になることはないし仕事のキャリアはあとで取り返すこともできるよ、頑張りすぎないでね、と今子育てで大変な人には言ってあげたいです。

Q公認会計士を目指した経緯を教えてください

 専門学校で簿記と原価計算の無料講座を受けてみて、なんて面白い科目なんだろうとはまったことがきっかけです。そのあと、財務諸表論で苦しむことになるのですが(笑)。

Q最近興味のあるトピックを教えてください(会計士業界以外のトピックでも可)

 過去最大の貿易赤字、日本の債務残高が増え続けている、少子高齢化が止まらないなど暗いニュースには事欠きませんが、悲観的にばかりなっていても仕方ないと思っています。苦しいときこそ飛躍のチャンス、新しいテクノロジーで課題を解決できるのではないか、次の世代の人に明るい未来を見せてあげたい、などとつらつらと考えます。

Q公認会計士試験志望者へのメッセージをお願いします

 私は今社外役員をやっていますが、公認会計士を目指したときも、試験に合格したときも今の仕事をしているとは思ってもみませんでした。それだけ公認会計士の仕事は幅が広く、社会からのニーズも高いです。きっと今後も公認会計士が求められるフィールドは広がっていくと思います。少しでも興味を持った方にはぜひチャレンジしていただきたいです。特に女性は、ライフイベントの影響を大きく受けることが多いので、資格があると強みになります。頑張ってください。応援しています。

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