Q公認会計士試験合格後の略歴を教えてください
その後、体調不良もあり、2012年に監査法人を退社。幸いにすぐに子供を授かり、出産・育児をしていたところ、さて、このままでいいのかなともやもやするものの、今一度、フルタイムで仕事するのも何か違うと、まずは知り合いの税理士事務所でお手伝いを始め、士業は独立していいのだという、当たり前のことに気づき、独立事務所として仕事をすることに決めました。当初は何の当てもなかったのですが、監査法人時代のご縁や、公認会計士協会の役員でのご縁などを通じて、何かしらやることはあるという状況で、監査法人の在籍期間と同じくらいの時間が過ぎています。
Q現在の仕事内容について教えてください
独立事務所として仕事を始めてから、流動的に業務内容が変わっています。
以前は、IPOを目指されている会社の支援にということで、ほぼ、そこの従業員の方のように朝から夕方まで常駐し、メールアカウント等も付与していただき、実際に手を動かして内部統制の再構築や経理体制の見直し、監査法人対応をしていたこともあります。
その後、公認会計士協会千葉会の推薦業務で、千葉市や習志野市に関与するようになったところ、その推薦業務から広がり、特に地元の習志野市ではいくつかの審議会 (有識者や市民の第三者会議)の委員をご依頼いただき、また職員向けの研修会の講師なども務めています。そのような経験から、東京都の政策連携団体(外郭団体)の社外役員にお声掛けいただき、就任しています。パブリック業務は、監査法人時代には経験はなく、独立してから書籍等で自分で学びつつ、公認会計士協会の公会計協議会等の研修に参加して、知識を積んでいます。
監査業務には、監査法人を退職した時点で関与しないつもりでしたが、公認会計士登録が必要のない仕事ばかりだなぁという思いから、今は学校法人等の監査で補助者業務についています。数多くの公認会計士の方々と一緒に仕事ができるこの時間は、皆様の専門性の高さからいい刺激を受けるとともに、同業でお話ができることも楽しく、良いリフレッシュにもなっています。監査法人で長く学校法人監査に関与しておいたことが役立っており、どんな経験も無駄にならないと感謝しています。
Q仕事を行う上で心がけていることを教えてください
公認会計士協会の新しいタグライン「信頼の力を未来へ」ではありませんが、目の前のことを真摯に向き合い、一つずつ信頼を重ねていくことがとても重要であると感じています。独立に際しては、何の当てもなく、さてこれからどうしようかと思っていたのですが、監査法人時代のご縁や、公認会計士協会の役員でのご縁などを通じて、様々なお仕事に巡り合え、毎日充実して過ごすことができています。
また、公認会計士は会計・監査の専門家であることは当然ですが、それ以外の様々な知識経験が大きな武器になると感じています。私自身、非常に好奇心が旺盛で、気になったものは調べつくすし、足を運んでみたくなるところがあり、監査法人時代もよく勝手に現地視察を国内外でもしていました。そういったところで得られた知識を話題にすることで、ただ公認会計士として業務に当たっているわけではなく、クライアント等のビジネスそのものにも関心を持っているのだと感じていただき、より信頼を得られている面もあるようです。
ご依頼を受けたことは、報酬の多寡にかかわらず真摯に向き合うことと、興味関心を高く持つことを一番心がけています。
Q趣味でやっていることがありましたら教えてください
今は、一人旅の延長で、夫が忙しくても息子との二人旅を春休みや夏休みには決行しています。一人で動いていた時のノウハウがあるので、息子を連れていっても、まごつかずに済んでいます。
監査法人時代もですが、独立してからも、繁忙期とそうでない時期があらかじめわかっているので、計画を立てやすいのがこの仕事のいいところだなと思っています。
Q座右の銘は何ですか
「公認会計士ほど楽しい仕事はない」と、以前、広報の「実践躬行」に掲載していただいた際にもお伝えしましたが、今も変わりありません。子供のころから数字や計算が大好きで、その数字や計算の渦に埋もれて、人に感謝され、お金までいただけるなんて、ありがたいなぁといつも思っています。
ただ、これはあくまでも私にとってのことですが、働く多くの方が、ご自身の仕事ほど、楽しい仕事はないと思えることができたら、とても幸せな世界なのではないだろうかとは考えています。
Q子育ての大変な時期をどのように乗り切りましたか
子供は小学3年生の息子が一人です。風邪等もほとんど引かず、健康なので、言うほどの苦労はなく来れている面はあるかと思いますが、大変な時期というのも、体調面でのサポートの大変さと、学年が上がる中での生活面でのサポートの大変さで分かれているように感じます。
特に小さい頃は、不測の事態での仕事のキャンセルやリスケは避けられませんでしたが、あらかじめその点はご了解いただいていたので、それほど大きな問題はなく乗り切れたのかなと思っています。
小学生になると、学年が上がる4~5月は繁忙期に重なり、生活面が乱れやすいので、お互いにしんどいなと感じることはあります。しかしながら、コロナ禍で、会議等がWebで実施されるようになり、夜の会合のための外出が減り、Web会議の横で公文やゲームなどをやってくれるようになり、この生活も悪くないなと思えるところでしょうか。
Q公認会計士を目指した経緯を教えてください
子供のころから数学が大好きで、将来は好きな数学を生かした仕事に就きたいと考えていました。大学は数学科の進学を考えていたのですが、授業内容を調べてみると数学科でも理科系科目の割合が多く、自分がやりたいこととはどこか違うなと感じました。そこで、数字を使った学問ができるのではないかと商学部に進路希望を変更しました。
大学に入学してすぐの6月に、簿記3級に百点合格し、簿記のおもしろさに目覚めたのですが、一方で、公認会計士試験はハードルが高すぎるものと考えていました。それというのも、当時は合格者数が700人前後で、目指したものの挫折する人も少なくありませんでした。大学在学中に簿記2級まで取得し、厳しい就職活動を経て、教育関係の会社へ総合職として就職しました。ところが、仕事で子供たちと触れ合い、自分の可能性の追求に貪欲な彼らを見ているうちに、自分もまだまだ頑張れるのではないかと考えるようになり、1年で退社し、公認会計士を目指しました。
Q女性会計士へのメッセージをお願いします
公認会計士試験に合格して多くの人は、まず監査法人に勤務すると思いますが、監査法人だけが働き方ではないと考えて欲しいと思っています。
合格時点では20%超ほどの女性がいらっしゃるのに、公認会計士として開業をしても数年後に廃業してしまう方も少なくなく、全体の女性比率は15%程度に留まっています。
公認会計士を目指す女性はとても真面目で、優秀な方がとても多い印象です。一方で、監査法人で男女の差がなく一生懸命やっているうちに疲れ果ててしまう人も少なくないのかなと思っています。それで、もう公認会計士はいいやってなってしまうのではないかと。そのような方がいるのは、ご本人にとっても、社会全体にとってももったいないです。
視点を変えればやれることはたくさんあります。家で育児をしながらPCでできる仕事もありますし、地元の企業や地方公共団体等からも公認会計士の力は求められています。私は、女性公認会計士として、頑張りすぎた故に辞めてしまう女性公認会計士を少しでも減らしたいなと考えています。
子供を産んでママになっても公認会計士は自分の知識や経験を生かすことができる仕事です。仕事への取り組み次第で、バリバリもできるし、ゆるめにすることもできる数少ない職業なのではないかと思います。
せっかく、公認会計士になったのですから、公認会計士として自分なりにできることを見つけて行って欲しいと思っています。