近年、国内外でサステナビリティ情報開示の拡充が進んでいる。サステナビリティ情報の中でも、先行して開示が進む気候変動は、気候関連財務情報開示タスクフォース（TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures）の最終報告書（TCFD提言）で示される四つの柱（ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標）から成るフレームワークに基づく開示が広がっている。こうした気候変動情報開示のグローバルでの拡大に追随する形で、TCFD提言を参考にして自然関連の情報開示フレームワークを開発するのが自然関連財務情報開示タスクフォース（TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures）である。企業活動は自然資本に依存しており、生物多様性の喪失が企業の事業活動に与える影響が甚大であると認識されつつあるものの、多くの企業や金融機関は意思決定において自然関連リスクと機会を十分に考慮するための情報を把握できていないのが現状である。こうした課題に対処するため、TNFDは、2021年6月に発足し、組織が自然関連リスクを報告し行動を起こせるようにするためのリスク管理と情報開示に関するフレームワークを開発している。
TNFDのフレームワーク開発には、オープンイノベーションのアプローチが採用され、市場参加者やその他のステークホルダーからのフィードバックを受けながら進められている。2022年3月に「ベータ版」と呼ばれるプロトタイプフレームワークの第１弾（v0.1）をリリースして以来、2度の更新（v0.2及びv0.3）を経て、2023年3月に最後のベータ版（v0.4）が公表された。v0.4に対するコメントを2023年6月1日まで募集し、2023年9月に最終版（v1.0）を公表する予定である。
TNFDフレームワーク案は、以下の三つの要素から構成されている。
- 自然を理解するための主な概念と定義
- 自然関連のリスクと機会の評価アプローチ（LEAPアプローチ）
- 開示提言(Recommended Disclosures）
本稿ではv0.4の内容を基に、この三つの構成要素の概要を説明する。
なお、本原稿では、原則としてTNFD日本語版に基づき説明しており、その結果、TCFD提言における訳語と異なるものがある。
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