会長ご挨拶

公認会計士が持続可能な世界の実現に貢献し続けていくために

日本公認会計士協会 会長 関根愛子日本公認会計士協会会長 関根愛子

 2019年の年頭に当たり、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 平素より日本公認会計士協会(以下「当協会」という。)の会務にご理解ご支援を賜り、誠にありがとうございます。
 おかげさまで、2018年7月6日をもって、公認会計士制度は、制定から70周年を迎えました。監査の専門家として誕生した公認会計士も、社会からの期待に応える中で、上場会社の監査のみならず、多くの役割を担うようになってまいりました。今後も引き続き、公認会計士が、監査及び会計の専門家として、国民経済の健全な発展に寄与するという使命を果たしていくためには、経済や社会構造の変化、社会からの期待の変化に適応していくことが求められます。
 2019年の年頭に当たり、これら変化とそれに適応していくための当協会の施策、そして未来に向けた取組について述べさせていただきます。

1.資本市場における透明性向上の要請

 近時の社会構造の変化の中の大きな動きとして、社会全体での組織・事業の透明性向上の要請が挙げられます。とりわけ、資本市場においては、国際化・多様化が進む企業が持続的な成長を達成するために、情報開示の充実に関する取組が進められています。透明性向上への取組は、提供される情報の量を増やすことが目的ではありません。情報の提供の充実による対話とステークホルダーからのフィードバックを通じて、よりよいプラクティスを生み出すことが重要です。
 このことは、公認会計士の業務についても当てはまると考えています。

2.監査における透明性向上の取組

 以前から「監査はブラックボックスである」との指摘もあり、2017年3月には「監査法人のガバナンス・コード」が策定され、監査事務所の透明性向上が進められていますが、2018年7月には監査基準が改訂され、監査報告書に「監査上の主要な検討事項(KAM)」が記載されることとなりました。
 KAMの導入によって、実施した監査の透明性が向上し、監査報告書の情報価値が高まるとともに、監査人と経営者や監査役等との議論の充実や、企業と財務諸表利用者の対話促進、企業の財務報告などにも好影響をもたらすことが期待されています。KAMの記載事項は、同業他社であっても、企業規模や風土、経営状況などが異なることから、全く異なる可能性があるものです。監査人は、企業の特性を理解し、十分に検討を行った上でKAMを記載することが重要であり、当協会としても、2020年3月期からの早期適用も含め、社会からの期待に応えられるよう、実務指針の改正に加え、研修等を通じて会員への周知活動に努めてまいります。加えて、金融庁に設置された「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」の議論も真摯に受け止め、監査業務のより一層の透明性向上へ向けた検討を進めてまいります。
 また、監査事務所の透明性に関連して、監査の品質の向上に向けた監査事務所の取組を示す指標となる「監査品質の指標(AQI)」について取りまとめ、研究報告として2018年11月に公表いたしました。AQIは、間接的ではあるものの監査品質に関連する定量的情報であり、監査事務所がAQIを適切に利用することにより、監査品質の向上に向けた取組状況への理解が少しでも促進され、監査役等が監査人の選定や評価を行う際の材料としても効果的に利用されることを期待しています。

3.当協会の透明性向上の取組

 当協会においても、透明性ある事業運営を進め、その結果を積極的に発信することにより、社会に対して一層説明責任を果たしていくとともに、いただいたフィードバックを基にさらなる改善を行うことを目的とし、情報発信力向上に取り組んでおります。
 そのため、まず、当協会が公表した情報等を定期的に確認いただけできるよう、ウェブサイトに掲載されたトピックスをメールマガジンで発信するとともに記者会見を定期的に実施しました。そして、社会に対して当協会の組織や活動を全体的に説明しご理解いただくよう、2018年よりアニュアル・レポートを作成し公表することといたしました。2019年以降も継続的に発行し、内容についてもより充実させていきたいと考えています。
 また、自主規制団体としての取組においても透明性向上に努めており、自主規制活動を担う各機関の活動概要の報告書を公表するとともに、社会に対し、説明責任を、より一層果たしていくための体制はいかに在るべきかという観点から、組織の在り方についても検討しています。

4.公認会計士の未来へ向けて

 私が2016年の7月に当協会会長に就任してから早くも2年半が経過し、任期も、残すところ半年あまりとなりました。会長に就任した当初より、様々な場面で多様な形で活躍する公認会計士の支援を行うべく、「公認会計士監査の信頼性向上」、「多様な領域での会計インフラへの貢献」、「人材育成・魅力向上」という3つの柱を掲げ、会務を行ってまいりました。私の任期において区切りをつけることができるものについてはしっかりと区切りをつけ、また、次期に引き継ぐ必要があるものについても、論点を整理し、方向性を示した上で引き継げるようにしたいと考えております。
 また、当協会では、これまで、公認会計士の自主規制団体として、法律上与えられた職責をどのように果たしていくかということを常に考えてきました。これは、当然のことであり、今後も引き続き、しっかりと考えていかなければなりませんが、会長の職務をまっとうする中で、同時に、職業専門家及びその自主規制団体として、様々な社会的課題の解決にもかかわっていかなければならないという思いを強くしています。
 現在、我が国では人口減少・少子高齢化の影響により、税収の減少や社会保障費の増大、さらには中小企業の後継者不足の問題が生じております。公認会計士は、社会福祉法人等の監査や事業承継を円滑に実施するための適切なサポート等を通じ地域経済の透明化・活性化にも貢献していかなければなりません。
 また、現在、持続可能な世界を実現するために、多くの企業や組織が全世界的な課題解決を目標とするSDGsを踏まえた取組を進めており、当協会においても、例えば、社会の様々な場面やライフステージで会計的な素養(会計リテラシー)が有用となることから、国民全体の会計リテラシーの向上を大きな目標に掲げて取り組んでおります。
 このように、公認会計士が持続可能な世界の実現に貢献し続けていくためには、様々な社会的課題の解決にも取り組んでいく必要があります。会計・監査の分野に限らず、協会として公認会計士として、どのような形で社会に貢献していくことが適切であるかについては、「持続可能な社会構築における協会の課題・取組検討委員会」を設置し検討を行っているところです。
 任期の最後まで全力で走り切り、一層、公認会計士制度が発展できるよう、皆様とともに尽力していきたいと思います。
 最後に、皆様の益々のご健勝とご活躍を祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。

2019年 年頭所感 ショートビデオ版

※本動画はYouTubeを利用しています。 システム環境によっては再生できない場合があります。
ページトップへ