会計教育活動に関する基本方針

日本公認会計士協会では、会計教育活動の取組の方向性などを「会計教育活動に関する基本方針」として取りまとめています。

会計教育活動に関する基本方針(2023年5月26日)

はじめに

日本公認会計士協会は、従来から自主的な活動として会計リテラシー(会計に関する基礎的な素養)の普及に取り組んでおり、2016年には会計基礎教育の推進を会則にも規定した。

このような取組の結果、2022年1月4日に公表された金融庁金融審議会公認会計士制度部会報告においては、「会計に関する教育・啓発活動の重要性に鑑み、これに対する日本公認会計士協会の役割・位置付けを明らかにする観点から、日本公認会計士協会の会則において、会計に関する教育その他知識の普及・啓発のための活動に関する事項の記載を求めることとし、日本公認会計士協会に対して会計教育の一層の推進を求めていくべきである」とされ、これを受けて同年成立した改正公認会計士法では、「会計に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定」が日本公認会計士協会会則の必要的記載事項となった。

協会では、2023年1月開催の総会において会則変更を行い、法の要請を踏まえて、会計リテラシーの定着と会計の有用性に関する認識向上を図るための会計教育活動を行うこととし、その推進組織としての会計教育推進会議を設置した。

会計教育推進会議は、協会が行う会計教育活動の基本的な考え方・方向性について検討を行い、会則第211条第2項第1号に基づく「会計教育活動の推進に関する基本方針」として次のとおり定めた。

1 社会における会計リテラシーに関する認識

会計は、経済活動を記録・計算することにより実態を把握し、その結果を利害関係者に報告するものであり、国民が、経済活動を正しく理解し、広く社会で活躍するためには、会計リテラシーを身に付けることが必要である。

国会における議論を経て法律に会計教育に関する事項が規定されたことや、教育課程における会計リテラシーに関連する取扱いの状況等を踏まえると、昨今では、社会における会計リテラシーに関する認識は向上しつつあるものと考えられる。しかし、広く国民に会計リテラシーを定着するための教育の機会や情報にアクセスする手段は、未だ十分に提供されているとは言えない状況にあり、協会を含む関係者の一層の努力が必要である。

2 会計リテラシーの普及・定着に向けた協会の役割

会計リテラシーの普及・定着は、会計に携わる関係者の取組だけで達成できるものではなく、教育機関、行政機関、学術界、経済団体等が広く連携して取り組んでいく必要がある。協会は、会計専門家である公認会計士の職業専門家団体として、会計リテラシーの普及・定着に向けて、そうした連携の中で中心的な役割を果たしていかなければならない。

3 会計教育活動に関する基本的な方向性

(1) 初等中等教育段階への注力
協会は、2020年に「会計リテラシー・マップ」を公表し、ライフステージに応じて身に付けるべき会計リテラシーの内容を提示した。ここに示したとおり、会計リテラシーは生涯の各段階で身に付け、活用されるべきものである。したがって、会計リテラシーを身に付けるための教育の機会は、年代を問わず提供されることが望ましい。
一方、長期的に見て、広く国民全体に会計リテラシーを普及・定着するには、若年段階で会計リテラシーに関して触れる機会の充実が必要である。加えて、協会、公認会計士業界の限られた資源を効率的・効果的に活用していく視点も重要である。
そのため、協会としての会計教育活動は、当面、初等中等教育段階で必要な教育の機会や情報にアクセスする手段の充実に注力していく。なお、具体的な取組を進めるに当たっては、教育関係者との間で、教授法の研究・周知や教材・ツールの制作と普及・教育活動の実践を適切に役割分担して、面的な広がりを意識すべきである。 また、金融経済教育、消費者教育等会計リテラシーを理解することで一層教育効果が高まると考えられる隣接する教育分野との連携も重要である。
(2) 公認会計士制度の普及・啓発の考え方
協会が行う会計教育活動には、会計リテラシーの普及のほか、公認会計士制度の普及・啓発も含まれている。 ここでいう公認会計士制度の普及・啓発は、公認会計士志望者の増加を主目的とするものではなく、国民全体への会計リテラシーの普及という観点で、公認会計士の業務内容や社会における役割を周知していくものである。
公認会計士の業務内容や社会における役割を理解することは、獲得した会計リテラシーを活用する際の前提となる情報の信頼性を理解することにほかならない。また、会計職業に直接従事しない者に対しても、会計の機能を支える公認会計士についてより広く知られることは、会計の有用性に関する認識の向上につながる。
このような考え方を念頭に置き、会計教育活動として、会計リテラシーと公認会計士制度の普及を同じ枠組みで行うことを通じて、社会での認識向上を目指していく。
(3) SDGs達成への貢献
国際連合によって提唱されているSDGs(持続可能な開発目標)では、目標4として「質の高い教育をみんなに」が設定されており、教育による知識や技能の獲得がSDGsの達成につながることとされている。
社会の持続可能性は適切な経済活動を通じて維持されるが、経済活動を正しく理解するには会計リテラシーが不可欠である。したがって、目標4への取組として会計リテラシーの普及・定着を図ることを明確にし、SDGs達成に貢献していく。

旧「会計基礎教育の推進に関する基本方針」はこちら

ページトップへ