自主規制担当 副会長メッセージ

自主規制担当 副会長 小倉 加奈子

自主規制制度の役割

 当協会は、公認会計士の自主規制団体として、公認会計士業務の質的水準の維持・向上に向けた様々な施策を実施しています。とりわけ、「品質管理レビュー制度」、「上場会社等監査人登録制度」及び「個別事案審査制度」の運用、そして、これらの制度の運営状況のモニタリングを通じて、監査の信頼性向上や、会員による自己規律の徹底、監査制度及び監査環境のより一層の整備・充実を図っています。

各制度の運用について

 当協会の自主規制の重要な取組の一つとして導入している「品質管理レビュー制度」は、監査事務所の品質管理のシステムの整備及び運用の状況を確認し、不備が発見された場合には指摘を行い、改善を促すなどの指導・監督を行うことにより、監査事務所の一定水準の監査品質の確保を図るものです。2023年度においては、法規制としての上場会社等監査人登録制度の導入に伴い、上場会社等の監査を行う監査事務所に対し、より重点を置いたリソース配分を行い、上場会社等の監査を行う上で求められる業務管理体制の整備について確認するほか、品質管理のシステムの整備状況について重要な不備事項の要因の領域及び項目の具体例を明確化し、高い規律付けの一環として、新たな目線で品質管理レビューを実施しました。 一方、「個別事案審査制度」では、公認会計士業務等に係る個別の問題が発生した場合に、当該個別の問題に対する指導・監督機能の発揮、また、処分懸念事案に係る調査及び審議並びに当該処分懸念事案に係る懲戒処分についての審査を担い、本制度の適切な実行に努めています。公認会計士法及び倫理規則の改正など、当協会の自主規制機能の強化に向けて社会からの期待が従来以上に高まる中で、協会の自主規制機能の適正な行使・運用を図り、自主規制機関としての対外的な説明責任を履行し、懲戒処分の実効性を確保する方策を検討しています。具体的には、「懲戒処分の量定に関する考え方について」(量定ガイドライン)の一部変更や、懲戒処分の周知、公示及び公表制度の見直しを行っています。さらに、自主規制機関としての指導・監督機能の更なる充実・強化を図るため、個別事案審査制度と品質管理レビュー制度の連携の在り方等を継続して検討してまいります。 企業の不正事例や監査法人の行政処分が行われた事案が複数発生している中、当協会も指導・監督・懲戒処分等の有効性・適時性の確保に向けた取組に継続して励んでまいります。 これらの各制度及び法令上の登録制度と位置付けられた「上場会社等監査人登録制度」の運営状況は、外部有識者を中心に構成されたモニタリング機関(自主規制モニター会議)による定期的なモニタリングを受けており、多岐にわたり参考となる意見・助言を受けています。2023年度においては、特に、2023年4月1日から運用を開始した「上場会社等監査人登録制度」について、透明性・客観性をもって運営がなされているかといった視点から闊達な議論がなされました。自主規制の各制度が適切に機能し、公認会計士制度に対する社会の信頼確保に資するよう、今後の制度運営に活かしてまいります。

新たな発信の在り方の進展に向けて

 公認会計士が、監査を通じて資本市場の信頼の基盤である企業情報開示の信頼性の確保に貢献していくためには、監査役等や資本市場関係者の皆様に当協会の自主規制の取組を広く継続的に情報発信し、ご理解いただくことが重要と考えています。同時に、より読者にとって理解しやすい情報発信となるよう、既存の在り方にとらわれず、発信方法や開示内容を改良していく必要性も強く感じているところです。
 こうした問題意識のもと、2023年度においては、「上場会社等監査人登録制度」の法制化を好機ととらえ、「品質管理レビュー制度」の一環として整理されていた「上場会社監査事務所登録制度」を独立した制度として切り出し、「品質管理レビュー制度」、「上場会社等監査人登録制度」、「個別事案審査制度」及びこれらの制度の運用状況のモニタリングをする「自主規制のモニタリング」の枠組みがより明確になる構成とし、協会の自主規制の各制度が一体となって資本市場の維持発展に貢献していることを理解できる資料としています。本書及び併せて公表している資料一式が、皆さまのご理解の一助となれば幸いです。

2024年6月

日本公認会計士協会

副会長 小倉 加奈子

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