グローバル会計・監査フォーラム「公認会計士監査の変革のとき~品質による競争の時代へ」開催報告
- 掲載日
- 2017年04月19日
日本公認会計士協会では、監査の信頼性の確保と監査品質の向上に向けて、各種の取組みを推進していますが、次に掲げた事項を中心に、現在までの取組み状況や当協会の考え方を伝えるとともに、今後の変革の必要性を考えるためのセミナーとして、2017年3月23日(木)公認会計士会館ホールにて、グローバル会計・監査フォーラム「公認会計士監査の変革のとき~品質による競争の時代へ」が開催されましたので、その概要を報告させていただきます。
■テーマ
・公認会計士監査の変革のとき
・監査法人ガバナンス・コードに込められた公認会計士監査に対する社会の期待
・監査報告書の長文化(透明化)
・品質管理レビュー制度の現状と課題への対応
・我が国における開示・監査制度の一元化
■講師
Rachel Grimes 氏(IFAC会長)
Fayezul Choudhury 氏(IFAC CEO)
関根 愛子(日本公認会計士協会 会長)
鈴木 昌治(日本公認会計士協会 副会長)
山田 治彦(日本公認会計士協会 副会長)
住田 清芽(日本公認会計士協会 監査・品質管理基準担当常務理事)
セミナーは、まず、日本公認会計士協会の関根会長の開会挨拶で幕を開け、続いて、IFAC CEOのFayezul Choudhury氏により、「財務報告のサプライチェーンにおけるステークホルダー・監査人の果たす役割」と題した特別講演がなされました。
質の高い情報を投資家に届けるために、会社が堅牢なプロセスで財務情報を作成し、監査人は会計基準という物差しをもとにそれを監査し、その監査が適切であるかを当局がモニターするといった一連の流れをサプライチェーンと表現することで、目的、役割が自ずと明確になると感じました。
その後、関根会長により総論として「公認会計士監査の変革のとき」と題した基調講演がなされました。
公認会計士監査の信頼回復と向上が第一の課題と認識し、日本公認会計士協会が自主規制団体として全力で取り組んでいることが冒頭に述べられ、以下の「会計監査の在り方に関する懇談会」の5つの提言項目を踏まえた協会の対応状況についての全体像が紹介されました。
Ⅰ.監査法人のマネジメントの強化
Ⅱ.会計監査に関する情報の株主等への提供の充実
Ⅲ.企業不正を見抜く力の向上
Ⅳ.「第三者の眼」による会計監査の品質のチェック
Ⅴ.高品質な会計監査を実施するための環境の整備
中でもⅢ.に関して、会計士個人の力量の向上と組織としての職業的懐疑心の発揮が最も重要で最も難しいとの認識のもと、有効な研修の拡充と監査法人の取組みの支援に注力していくことが述べられました。
また、Ⅳ.で触れられているファームローテーションについては、その現実性と現状のパートナーローテーションの効果を再評価し、チームローテーションも含めて検討するとされました。この点はIFAC会長のRachel Grimes 氏の見解と近いと感じました。
次に、住田常務理事より各論①「監査法人のガバナンス・コードに込められた公認会計士監査に対する社会の期待」、各論②「監査報告書の長文化(透明化)」が解説されました。
監査報告書の長文化は単に情報量が増えるだけでなく、コミュニケーションツールとしての役割こそが最大の有益性なのだと理解しました。
すなわち、長文監査報告書の形になるまでには監査人、経営者、統治責任者間のコミュニケーションが充実化し、リスク認識が共有されることで効果的なガバナンスの強化が期待されますし、財務諸表や監査報告書の利用者にとっては監査のプロセスや同業他社における監査との比較検討が可能になり、監査品質の向上が促進されると考えられます。
浸透するまでのハードルは幾多ありそうですが、先のChoudhury氏講演のサプライチェーン機能の向上に非常に有益であるとともに、監査業界にとっても、社会の理解や期待が高まる好循環にもつながるのではないかと感じました。
続いて、鈴木副会長より各論③「品質管理レビュー制度の現状と課題への対応」、山田副会長より各論④「我が国における開示・監査制度の一元化」と題した講演がなされました。
会社法と金融商品取引法の法定開示における財務諸表および監査の一元化という提言の中で、株主総会における議決権行使の基準日が3か月以内の日本に対し、48時間以内のイギリスの事例紹介には衝撃を受けると同時に、基準日を変更すれば現行会社法下でも株主総会を決算日後3か月を超える日程で開催することが可能であり、監査の充実と投資家の十分な議案検討期間を確保できるメリットは大きいと思いました。
最後に、IFAC会長であるRachel Grimes 氏から「我が国の監査品質の向上に向けての取組み状況に対する期待」を閉会メッセージとしていただき、セミナーは終了しました。
正味3時間以上のプログラムながら、非常に充実した内容のセミナーで、まさに公認会計士監査が変革のさなかにあることを実感しました。
(広報委員会副委員長 廣瀬美智代)