資本市場に参加する企業は、投資家に経営内容を伝えるために財務情報を公開します。これを情報公開(ディスクロージャー)と言います。このとき経営者は、正しい情報を説明する責任(アカウンタビリティ)を負っていますが、自ら作った情報の正しさを自らが証明することはできません。そこで企業は、独立した第三者に証明を依頼します。この独立した第三者が公認会計士であり、公認会計士が判断するために行う検証を「監査」と言います。監査の結果は、「監査報告書」として企業に提出されます。
公認会計士監査は、その内容を検証して、「適正」か「不適正」かを判断した結果を報告するという意味で、保証業務であるといわれています。金融商品取引法では、すべての上場会社に公認会計士監査を義務付けています。公認会計士が企業の財務情報を検証し、その正しさを保証することによって、投資家は安心して投資活動を行うことが可能になるのです。
また、法令等で監査が義務付けられているのは上場企業だけではありません。学校法人、独立行政法人、社会福祉法人、医療法人など、その財務諸表の適正性を保証することが求められている事業体や団体等は、それぞれの法令等で監査が義務付けられています。
このように公認会計士監査は、公共の利益を擁護するためにさまざまなところで機能しています。
公認会計士監査業務の流れ
1. 予備調査
監査の依頼が来ると、監査人はまず公認会計士としての責任が果たせる状況にあるかどうかをチェックします。監査を受ける会社が監査に協力する体制にあるか、監査に対応可能な内部統制が構築されているかどうかなどを調べます。
監査は試査(サンプリング)により行われるため、内部統制が確立していない会社はその構築から始めなければなりません。
2. 監査計画の立案
管理組織のレベル、内部統制の整備・運用状況、取引の実体などを分析して、間違いの可能性の高い箇所をピックアップします。この間違いの可能性の高い箇所をリスクと呼び、そのリスクに焦点を当てて監査することによって、より効率的な監査を実施することができます。それがリスク・アプローチと呼ばれる手法で監査計画立案において最も重要な手続です。
3. 監査手続の開始
立案した監査計画の結果に基づいて具体的な監査手続を行います。監査は通常数人のチームで編成され、大会社については数百名の場合もあります。「売上」や「仕入」などの勘定科目ごとに担当者が決められ、実査・立会・確認・勘定分析など監査手続を効率的に行い、監査証拠を積み上げていきます。
4. 監査意見の形成
それぞれの担当が、その勘定科目に記載誤りがないと確信できるところまで調べがつくと、その業務の過程を監査調書にして現場の責任者に報告します。現場責任者(主査)はそれらの報告をまとめて相互の関連性や整合性を見ながら、全体としての正しさを検討します。その結果を監査責任者(業務執行社員)に報告し、監査責任者は最終的に適正かどうかを検討して、監査チームとしての意見を形成します。
5. 審査
監査チームの結論を、その監査に携わっていない別の公認会計士が客観的な視点でチェックをします。これを「審査」と呼び、上場企業を監査する事務所には必ず「審査担当」を置くことを日本公認会計士協会では義務付けています。監査現場を見ていない審査担当は、監査責任者から監査意見形成の過程の説明を受け、監査調書を査閲し、その判断が適切かどうかを客観的に判断します。
6. 「監査報告書」の提出
こうして公認会計士監査の報告書は作られます。「監査報告書」は監査責任者が自筆のサインをして、監査した企業の取締役会宛に提出します。企業は財務諸表にこの「監査報告書」を付けて、自らが作成した財務書類に間違いがないことを明らかにします。